ゼロから比較!農業の種類別ガイド:野菜、果樹、畜産…未経験者が知るべき特徴と選び方
農業への新規参入を考え始めたとき、「そもそも農業ってどんな種類があるんだろう?」「自分にはどんな農業が向いているんだろう?」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか。農業と一口に言っても、栽培するものや育てる生き物によって、働き方や必要な知識、資金などが大きく異なります。
この記事では、農業未経験の方が、就農の第一歩としてどのような種類の農業があるのかを知り、自分に合ったものを見つけるためのヒントを提供します。それぞれの特徴を理解し、自身の適性や準備状況と照らし合わせながら、就農計画を具体的に進めていくための参考にしてください。
農業の主な種類とその特徴
日本の農業には様々な種類がありますが、未経験からの新規就農を考える上で、比較的イメージしやすい代表的なものをいくつかご紹介します。
1. 野菜作(露地栽培・施設栽培)
- 特徴:
- 栽培する品目が多く、気候や土壌、市場ニーズに合わせて比較的柔軟に選択できます。
- 年間を通して作業があるため、計画的な生産管理が重要です。
- 露地栽培は自然環境の影響を受けやすく、初期投資は抑えやすい傾向があります。
- 施設栽培(ハウスなど)は気候変動リスクを軽減できますが、初期投資や維持管理費がかかります。
- 規模によって必要な土地面積が大きく異なります。
- 必要なもの・スキル:
- 土壌に関する知識、病害虫対策、栽培技術。
- 品種選定、播種(種まき)、定植、収穫、出荷調整などの一連の作業スキル。
- 体力(特に収穫や運搬作業)。
- 計画性、臨機応変な対応力。
- 初期費用の目安: 規模や栽培方法によりますが、露地栽培であれば比較的抑えられます。施設栽培は高額になる傾向があります。土地取得費用、農機具費用、種苗費、資材費などが必要です。
- 収益性・安定性: 品目や作柄、販売方法によって大きく変動します。市場価格の影響を受けやすいですが、特定の品目で高単価を目指したり、多品目栽培でリスク分散したりすることも可能です。
2. 果樹作
- 特徴:
- 栽培開始から収穫までに年単位の時間がかかるため、長期的な視点が必要です。
- 一度植えれば比較的長期にわたり収穫が見込めます。
- 剪定や摘果など、高度な技術や経験が求められる作業が多いです。
- 特定の季節に作業や収穫が集中する傾向があります。
- 必要なもの・スキル:
- 樹木の生理や病害虫に関する専門知識。
- 剪定、摘果、摘花、収穫、選果などの技術。
- 体力(高所での作業や重量物の運搬など)。
- 根気強さ、丁寧な作業。
- 初期費用の目安: 苗木代、栽培設備の設置(棚、灌水設備など)、土地取得費用など、野菜作と比較して高額になるケースが多いです。収益化までの期間も考慮が必要です。
- 収益性・安定性: ブランド力のある産地や品目であれば高単価が期待できます。天候リスクはありますが、栽培技術の向上や品質管理によって安定した収入を目指せます。
3. 畜産(牛、豚、鶏など)
- 特徴:
- 生き物を相手にするため、休みなく世話が必要な場合があります。
- 飼育舎や関連設備の規模が大きく、初期投資が高額になりやすいです。
- 家畜の健康管理や繁殖に関する専門知識が不可欠です。
- 排泄物の処理など、衛生管理や環境対策も重要になります。
- 必要なもの・スキル:
- 家畜の生態、疾病、栄養に関する専門知識。
- 給餌、健康観察、清掃、繁殖管理などの作業スキル。
- 重労働や不規則な労働時間への対応力。
- 動物への愛情と強い責任感。
- 初期費用の目安: 土地取得費用、畜舎建設費、家畜導入費、飼料費、設備の購入費など、農業の中でも特に初期投資が高額になる傾向があります。
- 収益性・安定性: 肉、卵、牛乳などの生産物の市場価格や需要によって変動します。病気のリスクなどがありますが、大規模経営や契約販売などによって安定化を図るケースもあります。
4. その他(米作、花き、キノコ、特用作物など)
- 米作: 日本の主要な作物ですが、大規模化が進んでおり、個人での新規参入は農地の確保や大型農機具の投資が課題となる場合があります。地域の共同作業への参加も重要です。
- 花き: 観賞用の花や苗を栽培します。栽培技術に加え、デザインセンスや販売チャネルの確保が重要になります。
- キノコ: 施設栽培が中心で、比較的狭いスペースでも取り組めますが、温度・湿度管理などの専門知識が必要です。
- 特用作物: ハーブ、薬草、特定の加工用作物など、ニッチな市場をターゲットにする場合があります。専門性や特定の販路確保が求められます。
未経験者が農業の種類を選ぶ際の考慮点
様々な農業の種類がある中で、未経験の方が「これなら自分に合いそうだ」というものを見つけるためには、いくつかのポイントを総合的に考えることが大切です。
1. 自身の体力と向き合う
農業は種類に関わらず、ある程度の体力を必要とします。特に露地野菜や果樹、畜産などは、季節によっては重労働が続いたり、長時間屋外での作業が必要になったりします。ご自身の年齢や体力、健康状態を正直に見つめ直し、無理なく続けられる種類は何かを検討しましょう。施設栽培や特定の品目など、比較的体力的な負担が少ないとされるものもあります。
2. 準備できる資金を確認する
種類によって必要な初期投資額は大きく異なります。畜産や果樹、大規模な施設栽培などは、数千万円、場合によっては億単位の資金が必要になることもあります。一方で、小規模な露地野菜栽培や、既存の施設を活用する形であれば、比較的少ない資金で始められる可能性もあります。自己資金、借入、補助金などを総合的に検討し、現実的に準備できる資金で取り組める種類を候補に入れましょう。
3. 興味・関心と適性を見極める
どんな農業に興味があるか、純粋に「これを育ててみたい」「この動物が好きだ」という気持ちは、就農を続ける上での大きなモチベーションになります。また、細かい作業が好きか、体力勝負が得意か、生き物の世話が得意かなど、自身の性格や得意不得意も適性を見極める上で重要な要素です。農業体験や研修を通じて、実際に様々な種類の作業に触れてみることを強くお勧めします。
4. 就農を希望する地域の特性
地域によって、盛んな農産物や栽培に適した気候、利用できる農地や設備などが異なります。希望する地域でどのような農業が中心に行われているのか、新規就農者向けのサポート体制はどうなっているのかなどを事前にリサーチすることも大切です。地域に根ざした農業を選ぶことで、技術指導を受けやすかったり、共同で作業に取り組めたりといったメリットがあります。
5. どのような働き方をしたいか
年間を通して忙しくても安定した収入を得たいのか、特定の時期に集中して働き、他の時期は比較的自由に過ごしたいのかなど、理想の働き方も種類選びの重要な要素です。米作のように田植えと稲刈りに作業が集中するものや、施設野菜のように年間を通して栽培できるものなど、種類によって年間スケジュールや労働時間は異なります。
6. 販路のイメージ
作ったものをどのように販売したいか(直売、JA出荷、契約栽培、EC販売など)によっても、向いている種類や規模は変わってきます。例えば、多品目の少量栽培であれば直売やマルシェ、EC販売などが考えられますし、大規模な単一品目であればJA出荷や食品メーカーへの契約販売などが考えられます。販売戦略と結びつけて種類を検討することも大切です。
自分に合った種類を見つけるためのステップ
「よし、この種類に決めた!」とすぐに断定するのではなく、まずは情報収集と体験を通じて、少しずつ可能性を絞り込んでいくのが現実的です。
- 情報収集: 気になる農業の種類について、インターネットや書籍で調べる、農業関連のイベントに参加するなど、様々な方法で情報を集めます。当サイト「ゼロからアグリスタート」でも、様々な角度から情報を提供しています。
- 就農相談: 農業振興を担う自治体や農業委員会、JAなどに設置されている就農相談窓口を利用しましょう。地域の特性や現状を踏まえたアドバイスが得られます。
- 農業体験・見学: 気になる農家や研修施設を見学したり、短期間の農業体験に参加したりすることで、実際の作業や労働環境を肌で感じることができます。
- 長期研修: より深く技術や知識を習得したい場合は、特定の作物や畜産に特化した長期の研修(農業大学校、先進農家での研修など)を検討しましょう。
まとめ
農業未経験から就農を目指す上で、どのような種類の農業に取り組むかを検討することは、その後の計画を立てる上で非常に重要なステップです。野菜作、果樹作、畜産など、それぞれの種類には異なる特徴、必要な資金、スキル、働き方があります。
ご自身の体力、資金、興味、そしてどのような地域で、どのような働き方をしたいのかといった点を踏まえ、多角的に検討することが成功への鍵となります。焦らず、情報収集や農業体験などを通じて、実際に触れてみることから始めてみましょう。この記事が、あなたの「ゼロから」の就農計画を具体的に進めるための一助となれば幸いです。