ゼロから始める就農準備：未経験者が基礎知識＋αで身につけるべきスキルと心構え
ゼロから始める就農準備：未経験者が基礎知識＋αで身につけるべきスキルと心構え
農業への第一歩を踏み出そうとお考えの皆さま、こんにちは。「ゼロからアグリスタート」編集部です。
就農を検討し始めたばかりの時期は、「何から学べばいいのだろう」「どんな知識が必要なのだろう」と、農業の基礎知識や栽培技術の習得に目が行きがちです。もちろん、作物を育てる知識は非常に重要です。しかし、農業を「生業」として長く続けていくためには、基礎知識だけでは十分とは言えません。
特に、これまで全く農業に触れてこなかった未経験者の方にとって、就農は単に作物を育てるだけでなく、生活スタイルや地域との関わり、さらには経営者としての視点など、多くの変化を伴います。これらの変化に適応し、安定した農業経営を築いていくためには、基礎知識に加えて「＋α」の準備が欠かせないのです。
この記事では、農業未経験者が就農前に、栽培技術や農地・資金の情報収集といった基礎的な準備と並行して、ぜひ身につけておきたいスキルや心構えについて解説します。
なぜ基礎知識だけでは就農は難しいのか？
農業は、単に畑を耕し種を蒔けば良いというものではありません。天候、病害虫、市場価格の変動など、予測不能な要素が多く、常に変化に対応する必要があります。また、個人事業主として経営を担う場合は、栽培だけでなく、資金管理、販売、経営戦略立案なども自分で行わなければなりません。
さらに、多くの場合、就農は地方への移住を伴います。新しい地域での生活は、人間関係の構築や地域のルール・慣習への理解が不可欠です。これらは、農業の基礎技術とは全く異なる領域の知識や能力が求められます。
このように、農業は多角的な視点と多様な能力が求められる仕事であり、基礎知識はあくまでその一部に過ぎないのです。
就農前に身につけておきたい「スキル」
農業を円滑に進め、安定した経営を行うためには、栽培技術以外の様々なスキルが役立ちます。これまでの社会人経験で培ってきたスキルも、農業の現場で意外な形で活かせる可能性があります。
コミュニケーション能力
農業は一人で黙々と作業するイメージがあるかもしれませんが、実際は様々な人との関わりが必要です。
- 地域住民や先輩農家: 地域の情報交換、困ったときの助け合い、農地や機械の共同利用などで密なコミュニケーションが求められます。
- 取引先: 農産物の販売先（農協、直売所、スーパー、飲食店など）との交渉や信頼関係構築は経営の要です。
- 家族: 就農は家族の協力が不可欠です。大変な時期も支え合い、就農後の生活を共に築いていくためには、日頃からの丁寧なコミュニケーションが大切です。
特に移住して就農する場合、地域のコミュニティに溶け込むことは、情報収集や生活の安定の上で非常に重要になります。積極的に地域行事に参加したり、あいさつを欠かさないなど、日頃からの心がけが大切です。
課題解決力・情報収集力
農業では、作物の生育不良、病害虫の発生、機械の故障など、予期せぬ問題が日常的に起こります。これらの課題に対し、自分で原因を考え、情報を集め、解決策を見つけ出す能力が必要です。
インターネット、専門書、農業技術センター、先輩農家など、様々な情報源から必要な情報を引き出し、判断する力が求められます。また、成功事例だけでなく失敗事例からも学ぶ姿勢が重要です。
体力・体調管理
農業は屋外での作業が多く、気候条件に左右されます。夏は暑く、冬は寒く、時には雨風の中で作業することもあります。また、収穫期など特定の時期には長時間労働になることも珍しくありません。
就農前に、自分の体の状態を知り、適切な休息を取り、体調を崩さないように管理するスキルは必須です。軽い運動を習慣にしたり、バランスの取れた食事を意識するなど、基本的な健康管理が農業を続ける上での基盤となります。
事務処理能力
個人事業主として農業を営む場合、日々の売上・経費の記録、確定申告、各種補助金・助成金の申請手続きなど、様々な事務作業が発生します。
これらの作業を正確かつ効率的に行う能力は、経営状況を把握し、適切な判断を下すために重要です。会計ソフトの活用や、税理士・行政書士などの専門家への相談も検討しましょう。
ITスキル
現代農業では、情報収集や経営管理、販路拡大にITスキルが役立ちます。
- 気象情報のチェック
- 市場価格の動向分析
- 農業系アプリやソフトを使った栽培管理、経営管理
- SNSやECサイトを活用した直販・情報発信
これらのスキルは、都市部での社会人経験がある方にとっては、比較的習得しやすい分野かもしれません。積極的に活用することで、農業経営の効率化や可能性の拡大につながります。
就農前に養っておきたい「心構え」
スキルと同様に、農業を続ける上で重要なのが「どのような気持ちで臨むか」という心構えです。
柔軟性・変化への対応力
農業は自然を相手にするため、計画通りに進まないことがほとんどです。天候不順で作物がダメになったり、病害虫が蔓延したりすることも起こり得ます。
こうした予測不能な事態に対し、落ち込みすぎず、状況に合わせて計画を変更したり、新たな対策を考えたりする柔軟な姿勢が求められます。「想定外はつきもの」と割り切り、変化を楽しむくらいの気持ちでいることが大切です。
継続学習の意欲
農業技術は日々進化しています。新しい栽培方法、品種、機械、販売戦略などが次々と生まれています。
就農後も、常に新しい情報を学び続け、自分の農業に取り入れていく意欲が重要です。研修会や講習会への参加、他の農家との情報交換などを通じて、学び続ける姿勢を持ちましょう。
地域文化への理解とリスペクト
就農先の地域には、独自の文化や慣習、人間関係が存在します。移住者として、まずはその地域を理解し、そこに暮らす人々への敬意を持つことが、円滑な地域生活を送る上での第一歩です。
急激な変化を求めたり、都市部の価値観を押し付けたりするのではなく、地域の歴史や文化を学び、行事や活動に積極的に参加することで、地域の一員として受け入れられやすくなります。
「稼ぐ」意識（趣味ではなく事業として）
多くの未経験者が就農を志す理由の一つに、「自然の中で働きたい」「自分のペースで暮らしたい」といった思いがあるでしょう。それは素晴らしい動機ですが、農業を「生業」とする以上、「趣味」ではなく「事業」として捉え、「稼ぐ」ことへの意識を持つことが不可欠です。
売上目標の設定、コスト管理、市場のニーズ把握など、経営者としての視点を持つことで、持続可能な農業経営に繋がります。
ポジティブ思考・ストレス耐性
農業には困難がつきものです。自然災害、価格暴落、人間関係の悩みなど、様々なストレス要因があります。
こうした状況に直面した時に、ネガティブになりすぎず、前向きに乗り越えようとするポジティブ思考や、ストレスを溜め込まずに対処できる耐性が重要です。一人で抱え込まず、家族や地域の仲間、相談機関などに頼ることも大切です。
これらのスキル・心構えをどうやって身につける？
これらのスキルや心構えは、すぐに完璧に身につくものではありません。就農準備期間中に意識して取り組み、就農後も継続的に磨いていく必要があります。
- 研修やセミナーへの参加: 農業技術だけでなく、経営、販売、地域活動に関する研修など、幅広いテーマの研修に参加してみましょう。
- 農業法人での雇用研修: 実際に農業の現場で働くことで、栽培技術はもちろん、リアルな労働環境や人間関係、経営の一端に触れることができます。
- 地域への短期滞在やイベント参加: 就農候補地を訪れ、地域の雰囲気を感じたり、住民と交流したりする機会を持ちましょう。
- 関連書籍や情報の収集: 農業技術だけでなく、経営、マーケティング、コミュニケーションに関する書籍やウェブサイトからも学びを得られます。
- 先輩農家への相談: 実際に就農している先輩の話を聞くことは、生きた情報を得る上で非常に有効です。就農相談窓口などを活用して、紹介してもらうと良いでしょう。
まとめ
農業未経験からの就農は、大きな挑戦です。栽培技術や資金、農地の確保といった基礎的な準備はもちろん大切ですが、それに加えてコミュニケーション能力、課題解決力、体調管理能力といった「スキル」や、柔軟性、継続学習の意欲、地域への敬意、経営意識といった「心構え」も、就農を成功させ、長く安定して続けていくためには不可欠な要素です。
これらの「＋α」の準備は、就農前から意識して取り組むことで、よりスムーズなスタートと、困難に立ち向かう力を養うことに繋がります。ぜひ、この記事を参考に、多角的な視点で就農準備を進めてみてください。応援しています。