ゼロからアグリスタート

ゼロから始める就農:未経験者が知るべき農業の「経営感覚」とは

Tags: 就農, 農業経営, 未経験, 資金計画, 事業計画, リスク管理

農業への関心が高まる中、就農を検討されている未経験の方も多いのではないでしょうか。栽培技術や農作業の知識はもちろん大切ですが、それと同じくらい、いや、もしかするとそれ以上に重要なのが「経営感覚」です。

農業は単に作物を育てるだけでなく、個人事業主や企業の経営者としてビジネスを営むことでもあります。しかし、未経験者の方の中には、「農業=土を触る、作物を育てる」というイメージが強く、経営面について十分に考えていないケースも見受けられます。

この記事では、未経験者が就農後に安定した農業経営を行うために不可欠な「経営感覚」について、それがなぜ重要なのか、そしてどのように身につけていけば良いのかを具体的に解説します。就農への第一歩を踏み出す前に、ぜひご一読いただき、ご自身の準備に役立ててください。

農業の「経営感覚」とは何か?

農業における「経営感覚」とは、単に作物を育てる技術だけでなく、農場を一つの事業体として捉え、利益を出し、継続的に運営していくための総合的な視点や判断能力を指します。具体的には、以下のような要素が含まれます。

これらは一般的なビジネス経営にも共通する要素ですが、農業の場合は相手が自然であり、天候や気候変動の影響を強く受けるという点で、独自の難しさや判断が求められます。

なぜ未経験者が「経営感覚」を身につける必要があるのか?

未経験からの就農は、技術習得だけでも大変です。それでもなお、経営感覚を早めに身につける必要があるのは、以下のような理由からです。

  1. 安定した収入の確保: 栽培技術だけでは、必ずしも利益に繋がりません。どれだけ良い作物ができても、コストがかかりすぎたり、販路が見つからなかったりすれば、収入は安定しません。経営感覚があれば、コストを抑えつつ、より収益性の高い方法で販売する戦略を立てることができます。
  2. 持続可能な経営の実現: 農業は長期的な視点が必要です。その場しのぎの対応ではなく、将来を見据えた設備投資、作付け計画、リスク対策などを行うことで、厳しい環境下でも経営を継続していくことができます。
  3. 計画性と判断力の向上: 就農計画や事業計画は一度立てて終わりではありません。状況の変化に応じて柔軟に見直し、適切な判断を下す必要があります。経営感覚があれば、データや状況に基づいて冷静に判断し、計画を実行に移す精度が高まります。
  4. 外部からの信頼獲得: 補助金や融資を受ける際には、しっかりとした事業計画とそれを実行する経営能力があるかどうかが問われます。経営感覚を身につけていることは、金融機関や行政からの信頼を得る上で非常に有利になります。
  5. リスクへの対応力: 自然災害や病害虫の発生など、予期せぬ事態は常に起こり得ます。日頃からリスクを意識し、保険加入や作物の分散といった対策を講じておくことで、被害を最小限に抑えることができます。

未経験だからこそ、最初から経営者としての視点を持つことが、回り道を防ぎ、就農後の早期安定に繋がるのです。

未経験者が経営感覚を磨くための具体的なステップ

では、農業に関する経営知識が全くない未経験者は、どのように経営感覚を身につけていけば良いのでしょうか。以下のステップを参考にしてみてください。

ステップ1:農業経営の基礎知識を座学で学ぶ

まずは、農業経営に関する基本的な考え方や用語を理解することから始めましょう。

「農業簿記」は、農業独自の会計処理を学ぶ上で非常に役立ちます。難しそうに感じても、基本的な考え方を知るだけでもコスト意識が変わってきます。

ステップ2:農業現場で実践的に学ぶ

座学で得た知識を、実際の農業現場でどのように応用されているかを見て、聞いて、体験することが重要です。

現場での経験を通じて、「なぜこの作業が必要なのか?」「この資材を使うと収益にどう影響するのか?」といった問いを持つことが、経営感覚を養うことに繋がります。

ステップ3:自身の事業計画を具体的に作成・更新する

頭の中で考えるだけでなく、具体的な数字に落とし込んだ事業計画を作成してみましょう。

最初は完璧でなくても構いません。計画を作成し、実際に就農準備を進める中で数字を見直していく過程が、コストや収益に対する意識を高めます。また、計画を第三者(相談窓口や金融機関など)に見てもらい、フィードバックをもらうことも有効です。

ステップ4:コスト意識を常に持つ

農業は様々な経費がかかります。一つ一つの資材、燃料、人件費などが収益にどう影響するかを意識する癖をつけましょう。

経費を抑えることは、そのまま利益率の向上に繋がります。

ステップ5:販路と市場を理解する

生産した農産物を誰に、どのように売るかによって、収益は大きく変わります。

消費者の顔を想像し、そのニーズに応えるにはどうすれば良いかという視点を持つことが重要です。

ステップ6:相談窓口や専門家を活用する

一人で悩まず、積極的に外部の支援を活用しましょう。

専門家の知見を借りることで、見落としていたリスクに気づいたり、より効率的な経営方法を知ることができます。

社会人経験を農業経営に活かすヒント

多くの未経験就農者は、農業以外の分野での社会人経験を持っています。これらの経験は、農業経営において大きな武器となり得ます。

これらのスキルや経験は、農業技術とは異なりますが、農業経営を安定させる上で非常に価値があります。ご自身の社会人経験を振り返り、農業でどのように活かせるかを具体的に考えてみましょう。

経営感覚を磨く上での注意点

最後に、経営感覚を身につけていく上での注意点をお伝えします。

まとめ

農業未経験からの就農を成功させるためには、栽培技術に加え、「経営感覚」を身につけることが不可欠です。経営感覚は、安定した収入確保、持続可能な経営、リスク対応力に繋がり、あなたの農業事業を確かなものにします。

座学で基礎を学び、現場で実践を通じて肌で感じ、自身の事業計画に落とし込んで具体的な数字と向き合うこと。そして、社会人経験で培ったスキルを積極的に活用し、必要に応じて外部の専門家の助けを借りること。これらのステップを通じて、着実に経営感覚を磨いていくことができます。

農業はやりがいのある仕事ですが、経営者としての視点を持つことで、その可能性はさらに広がります。最初から全てを理解するのは難しいかもしれませんが、一歩ずつ学びを進め、計画的に準備を進めていきましょう。この記事が、あなたの就農に向けた準備の一助となれば幸いです。

就農資金や事業計画の作成、相談窓口の活用方法については、当サイトの他の記事でも詳しく解説していますので、ぜひそちらも参考にしてください。