ゼロから始める農業機械・農具:未経験者が知るべき種類、選び方、コスト削減のヒント
農業を始めるにあたり、「どんな機械や道具が必要なのだろうか」「どれくらい費用がかかるのだろうか」と不安に感じている未経験の方は多いかもしれません。農業機械や農具は種類が多く、高価なものもあるため、何から手をつけて良いか迷ってしまいがちです。
この記事では、農業未経験の方が知っておくべき農業機械・農具の基本的な種類と選び方、そして初期投資を抑えるためのヒントについて解説します。ご自身の就農計画に合わせて、必要な機材を検討する際の参考にしていただければ幸いです。
農業機械・農具の基本的な種類
農業で使用される機械や農具は、行う作業によって多岐にわたります。ここでは、代表的な作業とそれに必要な機材の一部をご紹介します。
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耕うん・土壌準備:
- トラクター: 広範囲の耕うん、代かき、畝立て、肥料散布、収穫など、様々な作業に対応できる大型の農業機械です。馬力やサイズによって作業できる圃場規模が異なります。
- 耕うん機(管理機): トラクターよりも小型で、家庭菜園から比較的小規模な圃場での耕うんや畝立てに適しています。操作が比較的容易なものが多いです。
- プラウ、ロータリー: トラクターに取り付けて土壌を耕すための作業機です。
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畝立て:
- 畝立て器: トラクターや管理機に取り付けて、作物を植えるための畝を作る作業機です。
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播種・植付け:
- 播種機(シーダー): 種子を一定間隔で蒔くための機械です。手動タイプからトラクター牽引タイプまであります。
- 定植機: 苗を圃場に植え付けるための機械です。
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栽培管理:
- 草刈機: 圃場周辺や畔の草を刈るために使用します。エンジン式や電動式、肩掛け式やハンマーナイフ式など様々なタイプがあります。
- 噴霧器: 農薬や液肥を散布するために使用します。背負い式の手動タイプから、大型の動力噴霧機まであります。
- 管理機(中耕・培土用): 作物の生育に合わせて、株間の除草や土寄せを行うために使用します。
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収穫・運搬:
- コンバイン: イネやムギなどを収穫し、脱穀・選別まで行う大型機械です。
- 収穫機: 特定の野菜や果物を収穫するための専用機です。
- 運搬車(台車、軽トラックなど): 収穫物や資材を運ぶために必要です。
ご自身がどのような規模で、どのような作物を作るかによって、必要な機械・農具の種類やサイズは大きく変わります。最初は全てを揃える必要はありません。
失敗しないための農業機械・農具選びのポイント
農業機械・農具選びで後悔しないためには、以下の点を考慮することが大切です。
- 栽培計画との整合性: どのような作物(露地野菜、施設野菜、米、果樹など)を、どのくらいの規模(面積)で栽培するかによって、必要な機械の種類や性能が決まります。まずはご自身の具体的な栽培計画を立て、それに必要な作業工程を洗い出すことから始めましょう。
- 圃場条件: 圃場の広さ、形状、傾斜、土質(粘土質、砂質など)によって、適した機械が変わります。例えば、狭い圃場や傾斜地では大型トラクターは向きませんし、硬い土質では馬力のある耕うん機が必要です。
- 予算: 農業機械は高価なものが多いため、無理のない予算計画を立てることが重要です。初期投資だけでなく、維持費(燃料、メンテナンス、修理)も考慮に入れる必要があります。
- 操作性と安全性: 特に初めて農業機械を扱う場合は、操作が簡単で安全性の高いものを選ぶと安心です。購入前に実際に操作感を確認できると良いでしょう。
- アフターサービス: 故障時の修理やメンテナンスの体制も確認しておくことが重要です。近くに信頼できる農機具店があるか、部品供給はスムーズかなどを調べておくと良いでしょう。
- 情報収集: 農機具店に相談するだけでなく、地域の先輩農家の方々の意見を聞いたり、農業関連の展示会に行ってみたり、インターネットで情報収集したりすることも有効です。
初期投資を抑えるためのヒント
初期投資を抑えることは、就農初期の経営安定にとって非常に重要です。
- 必須最低限のものから揃える: 最初から全ての機械・農具を揃える必要はありません。まずは手作業や、最低限必要な機械で対応できる範囲から始め、規模拡大や作業効率向上の必要に応じて徐々に買い足していくのが現実的です。
- 中古品や型落ちモデルの活用: 信頼できる農機具店やインターネットオークションなどで、状態の良い中古品や型落ちモデルを探すことで、費用を大幅に抑えることができます。ただし、使用状況やメンテナンス状況をよく確認し、可能であれば専門家に見てもらうことをお勧めします。
- レンタルの活用: 使用頻度の低い機械や、特定の作業時期にだけ必要な機械は、レンタルで済ませるのも一つの方法です。地域の農機具店や農機レンタル業者に相談してみましょう。
- 共同利用・シェアリング: 地域によっては、複数の農家で共同で機械を所有したり、利用組合を作って管理・運用したりする仕組みがあります。また、近年は農業機械のシェアリングサービスも登場しています。
- 簡単な農具はDIY: 小規模な栽培であれば、畝立て器や管理機の一部のアタッチメントなどは、ホームセンターの資材などを活用して自作できる場合もあります。
- 補助金・助成金の確認: 新規就農者向けの補助金制度の中には、機械導入費用の一部を支援対象としているものもあります。利用可能な制度がないか、各自治体や国の情報を確認してみましょう。ただし、補助金はあくまで一部負担であり、申請や報告の手続きが必要な場合が多い点に注意が必要です。
- リース契約: 高額な機械を導入する場合、購入ではなくリース契約を選択することで、初期費用を抑え、計画的な経費計上が可能になります。契約内容をよく理解した上で検討しましょう。
まとめ
農業未経験からの就農において、農業機械・農具の準備は大きなハードルの一つかもしれません。しかし、ご自身の栽培計画や圃場条件に合わせて、必要な種類やサイズを見極め、様々な選択肢(新品、中古、レンタル、共同利用など)を比較検討することで、初期投資の負担を軽減することは十分に可能です。
焦らず情報収集を行い、農機具店や先輩農家の方々に相談しながら、最適な機械・農具選びを進めてください。そして、購入・導入後も安全に正しく使用するための技術習得やメンテナンスを忘れずに行うことが、農業を長く続ける上で重要になります。この記事が、皆さんの農業機械・農具選びの一助となれば幸いです。