ゼロから始める就農最初の3年間:未経験者が収入を安定させるためのリアルな稼ぎ方
農業への新たな一歩を踏み出す際、多くの未経験の方が抱える不安の一つに「就農後の収入は安定するのだろうか?」という疑問があるのではないでしょうか。特に、会社員としての安定した収入があった方にとっては、大きな懸念事項かもしれません。
農業は自然相手の仕事であり、天候や市場価格に影響を受けやすいため、収入が不安定になる側面は確かに存在します。しかし、適切な計画と準備を行うことで、就農初期の収入を安定させ、安心して農業を続けることは可能です。
この記事では、農業未経験の方が就農後の最初の3年間を乗り越え、収入を安定させるための現実的な考え方と具体的なステップについてご紹介します。
なぜ就農初期は収入が不安定になりやすいのか
就農して最初の数年間は、収入が不安定になりやすい時期と言われます。その主な理由としては、以下のような点が挙げられます。
- 生産技術の未熟さ: 経験が少ないため、栽培技術が確立されておらず、思ったような収量や品質が得られないことがあります。
- 販路の確立不足: どこで、誰に、いくらで売るかといった販売方法や取引先が定まっていないため、安定した販売収入が見込めない場合があります。
- 初期投資の負担: 農地、農機具、施設など、就農には多額の初期投資が必要です。これらのローン返済などが経営を圧迫することがあります。
- 自然災害や病害虫のリスク: 天候不順や病害虫の発生により、せっかく育てた作物が大きな被害を受け、収入が激減するリスクがあります。
- 運転資金の必要性: 種苗、肥料、農薬などの購入や、農機具の維持管理には継続的な支出(運転資金)が必要です。収入が入るまでにこれらの費用を賄う必要があります。
これらの要因が複合的に影響し、就農初期は計画通りの収入が得られない可能性があるのです。
就農最初の1年間で収入を確保するための考え方
就農初年度は、特に収入が不安定になりやすい時期です。まずは「生活を成り立たせる」ことに焦点を当てた計画を立てることが重要です。
- 生活費の確保を最優先に考える: 農業収入だけで生活費を賄うのが難しい場合は、事前に十分な貯蓄を準備しておくか、農業以外の収入源も検討に入れる必要があります。
- リスクの低い作物から始める: 栽培期間が比較的短く、栽培技術が確立されており、需要が安定している作物(例:特定の葉物野菜など)から始めることで、失敗のリスクを減らし、早期に収穫・販売して収入を得やすくなります。
- 確実な販路を先に確保する: 就農前に契約栽培の機会を探したり、地元の直売所や飲食店との関係を築いたりしておくことで、生産した作物を確実に販売できる道を作っておくことが安定収入への第一歩です。
- 兼業という選択肢: 就農と並行して、あるいは繁忙期以外に農業以外の仕事を持つ「兼業農家」としてスタートすることも、収入の安定化には有効な方法です。地域の特性やご自身のスキルを活かせる仕事を探してみましょう。
- 生活コストの見直し: 都市部から移住される場合は、生活コストが下がる可能性がありますが、それでも万が一に備え、収入が少なくても生活できるよう、支出を抑える工夫も検討しましょう。
2年目、3年目で収入を伸ばし安定させる戦略
就農2年目、3年目になると、少しずつ栽培技術や地域のことが分かってきます。この時期には、単に生活費を賄うだけでなく、収入を伸ばし、より安定させるための戦略を実行に移していきます。
- 栽培技術の向上と効率化: 1年目の経験を活かし、栽培方法を改善したり、作業の効率を高めたりすることで、収量や品質の向上、コスト削減を目指します。
- 販路の拡大と多様化: 直売所に加えて、インターネット販売(ECサイト)、道の駅、地域のスーパー、加工品販売など、様々な販路を試してみましょう。販路を複数持つことで、特定販路の価格変動リスクを分散できます。
- 多品目栽培によるリスク分散: 複数の種類の作物を育てることで、特定の作物が天候や病害虫で被害を受けても、他の作物で収入を補うことが可能になります。ただし、あまりに多すぎると管理が大変になるため、ご自身のキャパシティに合わせて計画的に増やしていくことが重要です。
- 経営計画の見直しと改善: 最初の数年間の収支実績をもとに、当初の経営計画を見直し、より現実的で収益性の高い計画に修正していきます。
- 補助金・助成金の活用: 国や自治体では、青年就農者や新規就農者向けの様々な補助金や助成金制度を設けています。これらの制度を活用することで、設備投資や運転資金の負担を軽減し、経営安定化につなげることができます。ただし、申請には条件や手続きが必要なため、事前に情報収集を行い、計画的に活用することが大切です。
収入安定化に役立つ具体的なアクション
就農初期の収入安定に向けて、日々の活動の中で意識したい具体的なアクションをいくつかご紹介します。
- 就農前の研修を徹底する: 農業技術はもちろん、経営や販売についても実践的に学ぶことができる研修先を選びましょう。座学だけでなく、実地での研修は即戦力につながります。
- 地域のネットワークを構築する: 近隣の農家さん、農業協同組合(JA)、普及指導センター、地域のキーパーソンなど、積極的に交流を持ち、情報交換や相談ができる関係を築くことが非常に重要です。地域のノウハウや非公式な情報、助け合いなどが得られます。
- 農地の特性を理解し、適切な作物を選ぶ: 借りる、あるいは購入する農地の土壌、気候、水利などの条件をよく理解し、その土地で育てやすい、あるいは需要が見込める作物を選ぶことが成功の鍵となります。
- 販売計画を綿密に立てる: 「作ったものを売る」ではなく、「売れるものを作る」という意識を持ち、ターゲットとなる顧客や販路を明確にして、いつ、何を、どれだけ生産するかという計画を立てましょう。
- 農業簿記で収支を正確に把握する: 収入と支出を正確に記録し、何にいくら使っているのか、どの作物がどれだけ利益を上げているのかを把握することは、経営改善に不可欠です。簿記の知識がなくても始められるツールもあります。
- 収入保険や共済への加入を検討する: 自然災害などによる大幅な収入減少に備えるために、農業保険や共済制度への加入を検討することも、リスクマネジメントとして重要です。
- 家族の理解と協力: 就農は家族全体のライフスタイルの変化を伴います。就農初期の収入不安定について家族と率直に話し合い、理解と協力を得ておくことが精神的な支えとなります。
まとめ
農業未経験からの就農初期は、収入が不安定になりやすいという現実があります。しかし、これは多くの新規就農者が通る道であり、決して乗り越えられない壁ではありません。
就農最初の数年間で収入を安定させるためには、就農前の周到な準備、特に技術習得と販路確保に向けた具体的な行動が不可欠です。また、就農後も、地域のネットワークを大切にしながら、栽培技術の向上、販路の多様化、そして正確な経営状況の把握と改善を粘り強く続けることが重要になります。
農業は決して楽な道ではありませんが、計画的に進め、必要な情報を収集し、地域の人々と協力しながら取り組むことで、少しずつ収入を安定させ、持続可能な農業経営を築いていくことは十分に可能です。
就農への一歩を踏み出す皆様が、これらの情報を参考に、不安を解消し、自信を持って農業の道を進まれることを願っています。